Lady & The Unicorn
ジョン・レンボーン、ペンタングル在籍時の4th.、1970年作。2nd.の「アナザー・マンディ」や3rd.「鐵面の騎士」から徐々に進められてきた探求を結実させた本作では、レンボーンのもう一つの音楽的なルーツであるブルース/ジャズ的な要素を排し、西欧中世/英国伝統音楽に照準を絞る。
ソロギターで奏でられる冒頭の14世紀の舞曲"Trotto/Saltarrello"から、エフェクトをかけたエレクトリックギターによるバッハの"Sarabande"やオリジナルの見事なギターソロ"The Lady And The Unicorn"を経て、ラストナンバーのヴィオラやフルートとのアンサンブルによる有名なトラッド"Scarborough Fair"まで静謐と独特の緊張感に包まれた演奏が展開される。決して聴きやすい音楽であるとは言えないが、中世/英国伝統音楽をスチール弦のフォークギターを使って現代に再生させたその試みは大いに評価されるべきだろうし、その試みは、様々な他の音楽のエッセンスを取り入れながら豊かさを増しつつも、ほとんどブレることなく現在まで継続されている。また、レンボーンのこうした仕事から逆に古楽そのものへと興味を向けることになった人は少なくないだろうと思う。
レンボーン自身、本作で中世音楽探求は一応の到達点を見たと感じたのか、次作「ファロー・アニー」で再びブルース/ジャズ的演奏に回帰することになる。(それ以降、ブルース/ジャズと中世/英国伝統音楽が絶妙にミックスされた「ハーミット」で最高レベルに達するというのが私の考え。)そして中世/英国伝統音楽探求はジョン・レンボーン・グループに引き継がれる。
それにしても、私が本作を初めて聴いたのは四半世紀以上前になるが、その時の鳥肌が立つような感覚が未だに忘れられない。
John Renbourn
John Renbournが1968年にPentangleに加入する前の1965年にレコーディングされたアルバムです。"Candy Man"ではJohnの歌声が聴けますが、基本的にアコースティックギター一本によるイギリスの伝統的なフォークソングの演奏が中心で、ギターのテクニックなど、ギター好きにはたまらないアルバムです。
なお、解説に書かれていますが、LP時代には収録されていなかった"Wildest Pig in Captivity [Instrumental Version]", "Can't Keep from Crying", "Blues Run the Game"がボーナスとして入っていてお得です。
Bert and John
アメリカのそれと異なり、イギリスにおけるフォークロックは、声高にアジテーションを唱えるよりも、むしろケルト民謡の伝統に則って精神の内奥に深く沈潜していく方向で発展してきた。本作は、バートとジョンの二人によるギターのインタープレイが聴き物である。テクニック的には非常に高度なことをやっているが、むしろ聴くべきはその暗鬱なメロディーラインである。バロックやインド音楽の要素さえ感じさせるダウナーなサウンドは、お休み前のリラクゼーション音楽としても最適かもしれない。