山本五十六 (上巻) (新潮文庫)
定番の、五十六本。
上巻は、開戦直前までの話である。
駐米海外武官、ロンドン軍縮会議での逸話、
海軍次官時代、3国同盟締結に猛反対し、
命を狙われる話など、とても興味深い。
山本の攻め一本の性格や、とことんまでやるという性格
などの人間性も面白い。
また、新聞記者などへの情報の与え方など、
メディア操作をきちんと理解していたのか、と感心する。
歴史にifはないけれど、
連合艦隊司令長官でなく、政治の舞台を与えることができたら、
全く違った世界ができていたのでは、と思えてしまう。
「男の修行」や「・・誉めてやらねば人は動かじ」
など、気になる名将です。
きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本)
パートナーが子供の頃に読んでもらっていたものが家にあるので、読んでいました。こればかりは私も知っているお話でした。ところどころ記憶の遠いところをくすぐられるようなそんな懐かしいおもちゃに出会ったような感覚でした。
よくよく見ると阿川弘之原作となっていて、これもびっくりしました。やえもん機関車はもう古典(名作)として殿堂入りという絵本じゃないでしょうか。
雲の墓標 (新潮文庫)
京都の大学で「万葉集」を研究していたグループの1人である吉野次郎が留めた日記形式で物語は進んでいきます。軍隊というところでの生活、陸軍と海軍の違いと、また同じようなところ、そして戦局の変化に伴い、また軍隊生活に慣れていくにしたがって徐々に変わってくる精神的変化が、とても瑞々しく描かれています。
万葉集に心惹かれていた青年たちが、自分のこと、そして友人家族、また国に対する考えがうつろいで行く様が克明に記されていて、もちろんフィクショナルな小説なのですが、様々な描写や事実の積み重ねによって非常にリアルに感じさせられます。その辺の冷静さと低い視点はこの方の上手さだと思いますし、作家として重要なものであると思います。
同じゼミに出ていた4名の、それぞれの心の揺れ、そのうつろぎの振り幅の大きさや方向に違いはあっても、そのどれもが重く、そしてリアルです。人が日記という(あるいは手紙でも)文章にしたためるに至った現実の時間との差を、書くことで分かる客観性を伺えてまた良いです。様々な訓練の果てにある『特攻』という自死をもって完遂することの意味について深く考えることや、それから逃げること、そして別の手段を見つけるものまで違った結果をそれぞれが選択や強制をされていくのですが、その過程が細かく日常に混じって表されることで、説得力が高く素晴らしかったです。
『特攻』という非常に厳しい現実を受け入れる部分と、何とか逃れようとする部分の対比も、また鮮明でとても考えさせられました。当たり前ですが、行為とその結果との乖離が、私は個人的には重く、そして簡単に良かっただの、仕方なかっただの、意味が無かっただの、立派だの何だのとは言えないと思います。残念ながら『特攻』が行われたことによって日本が戦争に勝つことは無かったわけですし、『特攻』に全員が志願したわけではないと思います。しかし悲痛な覚悟を持って訓練をし、その自死の中に意味を見出そうとしていたのが、比較的合理的な海軍であったことは、また妙に意味深く感じられます。個人的にはなんとか他に方法が無かったのか?ということですが。もちろん今そういうことは簡単すぎるし何も分かってないのでしょうけれど。
およそ軍隊生活が最初から好きな方はいないと思いますが、しかし経験したことでその濃密な時間を過ごされ、良い意味でも悪い意味でも実経験をされた阿川さんの筆による悲痛な小説です。
お早く御乗車ねがいます (2011-09-22T00:00:00.000)
昭和30年前後の鉄道話。
「いい年した大人が鉄道好きとは」と少々照れながら
「旅」などに書いた鉄道記。
50代以上の鉄道ファンが就寝前に読むには最適。
米内光政 (新潮文庫)
筆者の海軍びいきが鼻につくところもありますが、戦時中の内閣総辞職〜組閣の繰り返し、日独同盟・日米開戦をめぐる攻防など、政治の動きが興味深く面白く読めました。米内光政という人物については、「無口だがただ者ではないと思った」みたいな印象を語る証言が何度も出てくる。そう言われてもなあ・・・という感じもするのですが、エピソードの積み重ねがその人物像を浮かび上がらせているように思う。特に天皇陛下との間にある信頼関係(?)が印象に残りました。証言の中の同時代の人々についても興味がわき、いろいろと知りたくなりました。あと2ページくらいごとに数字がふられ小章に分かれているので読みやすかったです。