ジャガーノート [DVD]
お気に入りの映画が続々とDVD化され,感涙にむせいでいる今日この頃。いよいよ真打登場といった感じですね。待ってました,リチャード・ハリス様。イヨー!この作品は,「ダーティ・ハリー」のクリント・イーストウッドを山田康男が吹き替えて好評を博したのと同様,テレビ公開時の吹き替えが最高だった一作です。英国海軍の爆弾処理班ともいうべき特殊部隊の活躍を描いた作品ですが,リチャード・ハリス演じるファロン大佐のキャラクターが素晴らしい。最初のうちはパイプをくわえながら,皮肉めいた台詞を口走り,着々とセオリー通りに爆弾処理に挑んでいく,少々キザな英国紳士ぶりが鼻につきますが,優秀な部下を失い,極限状況に追い込まれるにつれ,いつしかパイプはフィルター付シガレットに取って代わり,震える腕を他方の手で押さえつけながら,孤立無援の状態で,「頑張れ」と自分を大声で励まして作業に殉じようとする姿は,見るものの心を揺さぶります。最後には犯人に直接語りかけ,「俺は怖い」と臆病な本性までもさらけ出しながら,秒単位の攻防の中でギリギリの駆け引きを挑んでいきます。ベテランの老獪さと子どものような無邪気さを持ち合わせた複雑なキャラクターを見事に演じきったリチャード・ハリスに,ただただ脱帽です。親父の本棚に昔,この小説のペーパーバックがあったような気がしたのですが,オリジナル脚本のようなので,気のせいだったかも(ノヴェライズか?)。リチャード・ハリスはその後,アリステア・マクリーン原作の「黄金のランデヴー」という海洋アクションにも挑んでいますが,とてもこの作品の比ではありません。公開当時はまだ小学生で,この作品の本質を読み取れず,街頭のポスターの記憶だけが鮮明に残っています。
ジャガーノート [DVD]
70年代半ば、ハリウッドの娯楽映画の主流はオカルト映画とパニック(デザスター)映画であった。今作もその流れを受け、パニック映画として企画され、「ポセイドン・アドベンチャー」の延長上の作品として宣伝されたが、これは紛れもなく、“プロ”と“プロ”が互いの技量を認め合いつつ、己の面子と意地を以って、知力と気力を振り絞って命を張って闘う“静かなる冒険映画”の傑作だ。爆弾が破裂したり、嵐の中爆弾処理班がパラシュート降下で船に乗り込むといった絵的にスペクタクルな場面もあるが、とにかく、一番の見せ場が、犯人が仕掛けたドラム缶爆弾の処理を、自己の知識と技術と経験から黙々と行っていくリチャード・ハリスら処理班の“仕事ぶり”であるのがそそられる。1本また1本と導線を切っていくハリスの顔を、ドラム缶内部からアップで捉えた構図が素晴らしい。ピ〜ンと糸が張られた様な緊迫感の合間に、ウイットでシニカルな人間描写があるのも面白く、旅客係のロニィ・キニアも、市長役のクリフトン・ジェームズも、有閑マダム役のシャーリー・ナイトも、コミカルの中にも持ち場(イイ場面)が用意されているが、船長役のオマー・シャリフだけは見かけ倒しの情けなさ。さすがはリチャード・レスター、サスペンスを撮っても一筋縄ではいかない(笑)。ロシア船を2週間破格値で借り切り、豪華客船に見立て得意の早撮りで撮影、先方が断固拒否していた船内での爆破シーンを撮了日にちゃっかり誤魔化してとってしまった辺り、彼もまた紛れもなくプロフェッショナルである。