夕陽に向って走れ [Blu-ray]
☆『明日に向かって撃て!』と一見似たようなタイトルだし、出演者もダブっているので、紛らわしいが、これはインディアン実話をベースにした、かなりリアリスティックな作風の不条理ウェスタンである。インディアン保護区の恋人たちを、白人の保安官補が追跡する物語だが、こういう材料を扱うこと自体が【アメリカン・ニューシネマ】時代の象徴的な表れといえよう。年に一度の祭りに、インディアン青年のウィリー・ボーイ(ロバート・ブレイク)が、インディアン地区に帰ってくる。彼は恋人ローラ(キャサリン・ロス)の父親に、結婚の承認を求めたが反対され、謝って彼を射殺してしまう。こうして若い恋人たちの、辛く苦しい逃避行が始まった。追跡を命じられたのは保安官補のクーパー(ロバート・レッドフォード)と、その一行である。巧みな逃亡に、追跡隊は翻弄されるが、途中でウィリーは、一行の1人を殺してしまい、騒ぎはさらに大きくなる。やがてローラが死体となって発見され、追いつめられたウィリーが殺害したモノと判断された。そして、遂にクーパーはウィリーを発見して無傷のまま捕えようとしたが…。空しい逃亡、虚しい追跡に呆然とするクーパー。岩山での直接対決に、静かなサスペンスが盛り上がった。犯罪者のインディアンと白人の保安官という対照的な立場を背景に、アメリカ社会の恥部、矛盾、人種差別問題、権力を描き、病理的なアメリカ合衆国そのモノを辛辣に告発している。エイブラハム・ポロンスキー監督は、脚本家としてスタートしたお方だが、例の赤狩りの〈ブラックリスト〉にのせられ、20年もの空白を余儀なくされた痛ましい過去を持っている。これが2作目の監督作品である☆。
1969
美空ひばり、ちあきなおみの居なくなってしまった今の日本の音楽界で、最も幅広いジャンルを超えたレパートリーを持ち、美しい日本語の歌でリスナーを魅了することの出来る真の実力派シンガーと言える、由紀さおり。彼女こそは日本から世界のどこに送り出しても恥ずかしくないアーティストの一人だとは前から思っていたが、全く思いもよらなかったかたちでこの度の世界進出、ワールド・デビューが実現した。今までにもこの手の海外アーティストとのコラボ・アルバムは数多く作られて来たが、日本のみの発売のものばかりであった。しかし今回のこのアルバムは、まさに前代未聞の欧米・アジア等の世界22ヶ国同時発売である(もちろん海外のAmazonからも輸入盤が入手できる)。
このアルバムは彼女が「夜明けのスキャット」でメジャー・デビューを果たした"1969年"をテーマに日本の歌謡曲と世界の洋楽のスタンダード・ナンバーで構成されており、フランス語の「さらば夏の日」と少し英語が入る「パフ」を除いて、すべて日本語で歌われている。とかくこの手の作品は日本人の洋楽コンプレックスと西洋人の日本と中国を混同した変な東洋趣味に陥りがちになってしまいがちであるが、このアルバムではそれらが完全に克服されている。ピンク・マルティーニの「日本の心」を掴み切った演奏にも、大変驚かされる。
まさに今年の日本の音楽界最大の奇跡的なビッグ・ニュースであり、日本から世界に送り出すにふさわしい、日本のポップス界の金字塔的名盤の誕生である。由紀さおりはイギリスの音楽の殿堂ロイヤル・アルバート・ホールの舞台に立ち、「夜明けのスキャット」「ブルーライト・ヨコハマ」「夕月」などを歌い、彼女のことを何も知らなかった聴衆の大喝采を博した。カナダのダウンロード・サイトでは、何と1位である。これほどまでにエポックメイキングな出来事にもかかわらず、日本のマスメディア、CDショップの扱いのこの余りの軽さは一体何なのか。かつて日本でも人気の高かった親日家のイタリアのトランペッター、ニニ・ロッソは「日本のメディアは日本の優れたミュージシャンを海外に紹介する努力を怠っている」と発言していたが、海外どころか日本国内に於いても怠っているのではないか。日本のメディアの度が過ぎるアイドル、ゴシップ、そして権威至上主義には、全く呆れてものも言えない。
Led Zeppelin
例えば4枚目の「misty mountain hop」のような、驚異的に重
く安定した8ビートはファーストにはない。ここでののボーナム
は、当時のアトランティックのR&Bで聞かれるような、ジャジー
で比較的フリーなドラミングだ。4枚目以降の、飾らないが、や
けに存在感のあるドラムとまったく逆である。
だから、ジョン・ポール・ジョーンズのベースは、その自由な
ドラムスタイルに対応するかのごとく、イカレたフレーズを引き
倒す。これが凄い。ファーストの凄さは、実はここだ。
4枚目以降はよくも悪くも、メンバー全員の趣向がまとまった
(あるいは、ペイジの趣向をサポートした)。ファーストのように、
4人のアイデアがせめぎ合うカオスのようなアルバムは、意外に少ない。
「good times bad times」のような意味不明のリズムセクション
に対し「OK」を出してしまう、バンドとしてのキャパシティ。
これが、ファーストツェッペリンの凄さだろう。