旅立ち
「旅立ち〜足寄より〜」を草月ホールで観劇、そしてCD購入しました。
舞台では「旅立ち」を弾き語りで歌っていました。
終演後、松山千春の長年のファンという方々が「自分の歌にしている」と私にも絶賛しCD購入者対象の握手会に並んでいました。
観劇した人の多くがCDを購入していたのですが、それほどユウの生歌は素晴らしかったです。
実は私はPeaky SALT時代からのファンです。
バンド時代のCDも全て持っていて、今も毎日聴いています。
ちなみに私は角松敏生さんの大ファンでもあるのですが、角松ファンらしく一流ミュージシャンで完璧に固めたバックの演奏技術等含め音楽全体で楽曲を聴く癖がついています。そういう意味ではピーキーのバンド自体のクオリティーは残念ながらお坊ちゃまが真剣に一生懸命やってる感が強かったのは否めませんでした(もっとも、そういう意味では多くのバンドがこれに当てはまりますが)。
そのようなリスナーの私がどうしてPeakyのCDを全部買ったりライブに足を運んでいたかというと、ユウのヴォーカリストとしての才能に惚れたからでした。
ユウの声はなんともいえない魅力があります。それはグルーヴ感に違いありません。
声だけでグルーヴ感がたまらないと思わせるほどの力量、才能。
正直、これは母親譲りともいえると思う。
森山良子さんのお坊ちゃんの直太朗さんなんかと同質な感じの印象で、あたかも百恵ちゃんが男性だったらこんな感じだったのかな、と思えるような声です。
こんなヴォーカリストがどうして売れないの?と思ってしまうほど惜しい気持ちでバンド時代は応援していました。
哀しいかな・・・・ユウが「山口百恵」の息子という事実。
この事実が彼にとってとてつもなく大きな足かせとなっているように思います。
「山口百恵」のインパクトに勝る人は「美空ひばり」くらいでしょう。
普通の有名レベルの歌手、俳優の息子ではないんですね。
美空ひばりさんには実子がおらず、甥が養子となってビジネスを受け継いでいるのみです。
ユウは顔も声も百恵ちゃんを彷彿とさせる雰囲気を持っていて、そして、百恵ちゃんが持っていたような、普通の人が持ち得ないカリスマは持っていません。
裕福な有名人家庭で育ち、お坊ちゃま学校で育った好青年、それがユウの育った環境です。
本人が生まれたときは百恵ちゃんはユウにとっては当然ながら「普通の自分の母親」でしかなく、後々母親がかつて大スターだったことを知ったに過ぎないということだったでしょう。
デビューを果たしても質問は母親のことばかりで、流れるバックミュージックも自分のバンドの音楽ではなくて誰もが知っている百恵ちゃんの歌ばかりでした。
皆、自分を見てるのじゃなく、自分の向こう側にある母親を見ようとしている、それがずっと付きまとっているように見えてなりません。
よく「親の七光り」と言われるけれど、ユウは七光りどころか、かえってそれが不遇となっているとしか思えません。
「旅立ち〜足寄より〜」の舞台でも、演技はプロの俳優さんと遜色なく、もともと俳優?と思えるほど自然に溶け込んでいました。
そして、生の歌は圧巻です。
松山千春本人が絶賛。
それは百恵ちゃんの息子への「お世辞(かつてベストテンで百恵ちゃんに迷惑をかけてしまった事実もある)」では決してなく、本当にそう思ったのだろうと思わせる歌だったからでしょう。
そして、このCD。
アコギとドラム、ストリングス以外はコンピュータープログラミングで演奏されてます。
創作された音楽だけど、むしろ技術的に稚拙さを拭えなかった(角松ファンの目から見て)バンド時代の音楽よりも、ユウのヴォーカルの力量に合っていたと思います。
アコギのアレンジもよくて、とりわけ「季節の中で」はオリジナルを凌駕しており、「赤いシリーズ」などの主題歌なんかで使って欲しい感もあるほど。
買ってからというもの、毎日50回は聴いています。
騙されたと思って、聴いて欲しい。
そして、「百恵ちゃんの息子」というフィルターはあってもいいけど、評価できるところは評価してもよいのではと思う。
ユウのグルーヴ感を一度聴いて判断して欲しい。
この「旅立ち」と「季節の中で」でお試しあれ。
そして、ユウには旅立って欲しいと思う。