長い日曜日 (創元推理文庫)
映画「ロング・エンゲージメント」の原作です。
婚約者の戦死が信じられずに真実を追求するヒロイン、という粗筋で声高に反戦を訴えたメロドラマを予想していましたが、見事に覆されました。
戦場の悲惨を余す所なく伝えながらも、ある種の明るささえ感じさせる一歩引いたシニカルな筆致。フランスの気質なのか、この作家の個性なのか。序章から惹き込まれます。
謎解きの過程と結末に特に意外さはありませんが、異常な状況下で様々な選択を迫られる登場人物たちの葛藤と尊厳のドラマとして秀逸。
人が出会う悲惨も奇跡も、やはり人の手によってしかもたらされないという事実が胸に迫ります。