手紙 -殺しへの招待- DVD-BOX
前半は謎の殺人予告の手紙に恐怖に陥れられる村野武範と3人の男が主役、後半は村野に心を寄せる竹下景子が主役。竹下はブレーク前のはじめての主演作品。最初の数回を見ると、悪妻を持って苦悩する村野に竹下が同情し、それにひし美ゆり子や伊佐山弘子がヌードシーンで視聴者をひきつけ、美男美女がお決まりの結末になる展開が容易に予想されます。ところがサスペンスが回を追うにつれて高まり、殺人に発展しますが、限られた登場人物なのに、殺人の動機も手段も、犯人もまったく見当もつかない。一回20分ほどの20回の連続ドラマですが、原作がしっかりしているためか、犯人が最終回近くになってもわからない。わかってからもラスト5分まで結末の予想がつけられず、いい意味で視聴者の予想を大きく裏切る内容です。ひし美のヌードばかりが強調されている商品説明ですが、事件の鍵を握る女を演じるひし美の演技は見事で本作では助演ではありますが、彼女のなかの傑作の一つに数えられるべき作品。妖艶というよりは成熟した大人の女性の魅力のひし美とひたむきで清楚な竹下景子を見るだけでもファンには価値がありますが、二人の存在を抜きにしても、一級の推理ドラマとして、一般の視聴者にも薦めたい作品。性描写・殺人シーンなどは穏当で中学生からの鑑賞が適当。
恩田陸選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎003 (講談社文庫)
「スペシャル・ブレンド・ミステリー」第3弾の選者は恩田陸さん。低本となったのは1972年、1982年、1992年、各年の「ザ・ベスト・ミステリー」です。収録されている作品は、佐野洋「死者の電話」二木悦子「一匹や二匹」戸川昌子「眠れる森の醜女」天藤真「純情な蠍」高橋克彦「奇縁」馬場信浩「アメリカ・アイス」長井彬「帰り花」阿刀田高「マッチ箱の人生」。楽しめたのは、事件は深刻ながら探偵役である少年の活躍を明るく描いた二木氏の「一匹や二匹」、深夜のスナックで店のママが見事な推理を披露する、安楽椅子探偵もの、阿刀田氏の「マッチ箱の人生」、美術ミステリー、長井氏の「帰り花」、互いに互いを死んだと思い込んでいた恋人同士を描いた佐野氏の「死者の電話」の4編でした。いずれも完成度の高い作品です。好みの問題もあるでしょうが、あとの4編はどうもー。失礼ながら、馬場氏の「アメリカ・アイス」は小説と言うより習作のレベルでしょう。恩田陸さんの「解説」も面白いですよ。「厳選されたアンソロジー」という惹句は無視し、気軽に読める短編集として手に取られることをおすすめします。
死角に消えた殺人者―天藤真推理小説全集〈8〉 (創元推理文庫)
細かいことを言い始めると、リアリティに欠けるところもないわけではない。またプロットから犯人も分かってしまう。けれども、そんなことを言わずに楽しみたい。天藤真らしい一作だと思う。読後感も良い。
大誘拐 RAINBOW KIDS [DVD]
たまたま、衛星放送で見てあまりにも面白かったので、80歳近い母のために購入しました。82歳という年齢設定の北林谷栄さんの知的でおちゃめでたくましい様子を見ていると、人生何歳になっても楽しめるし、母に見てもらうことで、母も映画から生きる勇気をもらえるのではないかと思いまして。案の定、母も非常に喜んでくれて、2時間があっという間に過ぎたと言っています。こういう誰でも楽しめて、心温まる映画が増えるといいなあと思います。
陽気な容疑者たち―天藤真推理小説全集〈2〉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
1963年に東都書房から出た単行本の復刊・文庫化。
昭和37年度の乱歩賞の最終候補作に残った作品。著者の長編デビュー作でもある。
作風は当初から確立されていたようで、ユーモアのある味わい、人を食ったような展開、幸せで優しい結末はいかにも天藤調。
ミステリとしてはいささか不満が残る。プロットは良いが、トリックがいまいち。