From the 21st
デトロイト・テクノのオリジナル世代として名高いジェフ・ミルズが1999年に放った名作。オリジネイターらしいソリッドでミニマルなトラックが並んでいて、クールな熱を静かに放射しているような一枚だ。
なお、ジェフはテクノDJになる前にはヒップホップDJとして地元のラジオでパブリック・エネミーをかけ倒してクビになったりしていたという(笑)。この日本盤では、そのあたりの初期のキャリアが詳しく解説されていて面白かった。
エキシビジョニスト-ア・ジェフ・ミルズ・ミックス [DVD]
James Brown のグルーヴ系の曲は、グルーヴのあるリズムを何本か重ねることで、グルーヴを強力化しています。
それが、1本だけグルーヴがあり、その他のリズムは補佐的にすぎない、そんなビートのつくりをしている音楽と本物ファンクとのちがいです。
ポリリズムなだけでは駄目で、ポリグルーヴであってはじめてグルーヴが強力化するのです。
で、問題は何本グルーヴを重ねたらいいかです。
3本か4本、いや5本も6本も重ねるとすごいのではないか、
とぼくはずっと考えてきましたが、それではビート狂にしかよさが堪能できない、一般の人にはわからない代物になる、と最近気づきました。
でもこの前ふと、いい方法を思いつきました。
グルーヴのあるリズムを2本だけ重ねるんです。
この作曲法で強烈グルーヴになってる曲は既にいくつも存在します。
バッハの対位法のようなやり方ですが、バッハの対位法は2つの異なったメロディーを、互いが互いを掻き消すことなく同時に聞こえるように鳴らすものです。それをメロディーでなくビートでやろうというわけです。
その作曲法は具体的に言うとこうです。
グルーヴのあるリズムA・・・・・・・グルーヴのあるリズムA+グルーヴのあるリズムB・・・・・・・・耳休めのつなぎビート・・・・・・グルーヴのあるリズムA・・・・・・・グルーヴのあるリズムA+グルーヴのあるリズムC・・・・・・・・・耳休めのつなぎビート・・・・・・・グルーヴのあるリズムA・・・・・・・・・・グルーヴのあるリズムA+グルーヴのあるリズムD
または、
グルーヴのあるリズムA・・・・・・・グルーヴのあるリズムA+グルーヴのあるリズムB・・・・・・・・耳休めのつなぎビート・・・・・・グルーヴのあるリズムB・・・・・・・グルーヴのあるリズムB+グルーヴのあるリズムC・・・・・・・・・耳休めのつなぎビート・・・・・・・グルーヴのあるリズムC・・・・・・・・・・グルーヴのあるリズムC+グルーヴのあるリズムD
こうすればみんなが楽しめるシンプルさが確保できます。
しかも従来のダンス音楽の、単純すぎてしつこい点が改善されるかも。
プログレのように展開していく、プログレッシブ・ビート・ミュージックです。
上記のように、展開のしかたは脈絡があります。スティーブ・ライヒの six pianos などにヒントを得た作曲法です。
こうすれば単なるビートの羅列に過ぎないようなDJミックスとはちがったものになるでしょう。
ジェフ・ミルズ ライヴ-ブルー・ポテンシャル [DVD]
古くはスティーブ・ライヒや、ジョン・ケージ、
クラウス・シュルツなどクラシック界に置いて
一部の気鋭達によるアヴァンギャルドな試みとして
派生したミニマルミュージック。
(現代音楽とも言われる)
ジェフ・ミルズはその遺伝子を真に受け継ぎ、
現代テクノミュージックの核を担う名機606のビートと、
モンペリエ国立管弦楽団と共演する事によって
原点回帰を果たした。
プレーヤーによる故意な演奏上のズレを
脳的に捉え、快感を見出すといった
クラシックミニマルの表現手法を忠実に守り、
卓越したDJプレイとテクニックで
ミニマルミュージックを
更に壮大なスケールに進化、
昇華させる様は真に圧巻。
ミニマルとは何か、
その答えはクラシック界の気鋭な音楽家が
脳的快感を追求した事に始まった。
ジェフはその脈々と受け継がれた
スピリットをミニマルテクノと言った表現手法を見出し、
現代のダンスミュージックシーンにおいて
具現化したのだ。
また、ミニマル/アシッドテクノの
現在進行形を把握し易い作品とも言える。
ロケーションは南フランスのユネスコ遺産、
ポン・デュ・カール水道橋の
ユネスコ指定20周年記念イベント。
幾重にも重なる壮大でドラマチックな音の洪水は
歴史的な水道橋のたもとを優雅に流れ
リスナーに深い感動を与えた。
時空を1本のシールドで繋いだ名作。
スリーパー・ウェイクス
イントロがやや冗長だと感じた以外は傑作と呼んで間違いない水準に達している作品ではないだろうか。良くも悪くも彼独自の金太郎飴的なサウンドだが、昨今のリリースの中では頭一つ抜きんでている。この曇りの無い氷河のようなビートの響きにテクノの新たな地平を感じた。