オバマを狙う「白いアメリカ」 (祥伝社新書 176)
熱烈な支持と大ブームを巻き起こし、黒人初の大統領となったオバマ。今アメリカ本国では、健康保険の改革などで支持率が落ちてきているとも伝えられているが、もし日本でオバマ大統領の支持率調査が出来れば、圧倒的な支持率になるに違いない。そんなオバマが狙われて暗殺されるかも知れないと言うこの本を私は正直読みたくなかった。黒人大統領が生まれれば、暗殺される危険があると言うことは選挙中にも言われていたし、単なる人種差別がその原因と思い込んでいたからだ。
しかし、本の帯の見出しには複雑な背景がある様に書かれていて、思わずこの本を手にしてしまった。
読み始めると、過去の大統領の暗殺の歴史が書かれ(これは知識として良くまとめられている)、特に面白くなってきたのはレッドネック(赤首男)の話あたりからーーーそして一気に最後まで読んでしまった。
私を含めほとんどの人は、出張や観光でアメリカを見て(ほとんどが都市部)、アメリカは人種のルツボで人種差別があるとは聞いていても、それなりに当たり前のこととして上手くやっているな、という印象を持っていると思う。だから、アメリカは単に広いだけではなく、懐が深い寛容な国と思っていた。
日系三世といわれる筆者の解説に、アメリカは私が思っていたより遥かに広く、複雑な社会問題を内包しているかを強烈に再認識させられた。それがさらに世界的な広がりを持った問題であることもーーー。
この本は、単にスキャンダラスな話題を扱ったものというよりは、上記に述べたようにアメリカそして世界の複雑で難しい社会問題を取り上げた本である。
今、日本でも同じ名の民主党が政権交代を掲げて大勝利をした。また、9.11のマイケル・ムーア監督は鳩山首相を評して「日本のオバマ」と持ち上げた?。日米両国の事情は大きく異なるものの、同じチェンジ・改革の推進に立ちはだかる、社会の問題を知ろうとする人にはお勧めの一冊である。
刑務所の王
著者の井口俊英氏はアメリカの大和銀行で不正取引きをして刑務所にぶ
ちこまれた経歴を持っています。以前「告白」という本で不正取引きの
内容を告白していましたが、私は金融について全くよく分からないので
読みませんでした。
著者がニューヨーク連邦刑務所に収監されていた時、隣の房にいたジョ
ージ・ハープという61才のオヤジ(180センチ・90キロという立
派な体格)と知り合ったのが縁でこの本が生まれました。ハープは合計
33年服役するというツワモノで、高校卒業間近に酒をかっぱらった事
が人生の転落の第一歩でした。
数奇な出会いが数奇な人生を描写していきます。そもそも出会いという
ものが数奇なものなのかも知れません。それぞれの章が細かく別れてい
て、文体も読みやすくていい。ジョージが著者との別れ際に言った言葉
が味わい深いです。
What doesn’t kill you will make you stronger.
どんなつらい辛いことでも、死にさえしなければ、それは人生の糧にな
るという意味らしいです。法の下でなく、掟の下で生きるとはどういう
事かをじっくり味わえる本です。