ツレがうつになりまして。 プレミアム・エディション [DVD]
出演者と監督の、非常に真摯な製作、演技への姿勢にはただただ頭が下がります。私自身も「ウツ」の何たるかという現実は、少なくとも世に氾濫する単なる「情報」以上には、経験的に知っているつもりですが、その私に関する限り、納得のゆく丁寧な造り方にひたすら頭が下がりました。ウツの現実を非常によく研究して作っていますし、演じています。しかも舞台設定の大半は主人公夫婦が暮らす「家」とその空間の延長にあるという、本質的な室内劇で、そこに展開する物語の枠組みは、精神科医療とか臨床心理、カウンセリングといった、ある意味「産業・ビジネスモデル」と化して、手垢がつくだけついた分野からみた「治療行為」や「闘病」とは一線を画して、不可思議な「宇宙風邪」から立ち直るうえで「大切なの」は何なのか?という一つの解を誠実に求めています。本当は「一番大切なもの」と書こうかと思ったのですが、現実にウツに苦しんでいらっしゃる方は、十人いらっしゃれば十人が、重篤度やら、好むと好まざるとに関わらず与えられた生活条件や社会的な立場など、それぞれの個別状況が先にありきで、それに応じて自ずから解は変わるのだろうと思うと、「一番」という押しつけがましい修飾詞を使うのは慎むことにします。またその「大切なもの」が何かについては、同じ理由でここには触れません。ネタバレを避けるとか、そんな問題ではなく、これ以上は軽々しく論評すべきでないと思うからです。この映画にレビューを投稿するのは難しいですし、これが今苦しんでいらっしゃる方への「再起の道標」である、などと申すつもりは私にはさらさらありません。でも非常に真摯なつくりの名画であることは断言して良いと思います。そして、ご覧になる一人でも多くの方に、この一篇が「宇宙風邪」からの再起のため、かすかでも光明となることを祈るばかりです。
アンフェア the answer Blu-rayプレミアム・エディション
私はドラマ版「アンフェア」のファンでしたが、SP1で雲行きが怪しくなり、
それに続く「劇場版1(the movie)」の あまり変さに落胆した人間です。
本作の直前に北乃きい主演の「ダブルミーニング 二重定義」が放送されましたが、
ほとんど本編に絡まない内容であったため、地デジ録画だけで済ませました。
この最終作「アンフェア the answer」はネット上での酷評がすさまじかったので
まったく期待せずに劇場へと足を運びましたが、単にドラマのイメージと異なって
いるというだけの話で、劇場版1より遥かに完成度の高い仕上がりとなっていました。
また香川照之さんも少ない出番ながら、非常に重要なシーンを熱演されていますし、
監督の佐藤嗣麻子さんによる女性視点でのストーリー描写が目立つ作品です。
国家機密が隠されたUSBメモリーに施されたプロテクトドングルの謎を打破する
佐藤和夫(香川照之氏)のIT技術力が神レベルだったり、予告編のインパクト画用に
殺される無関係な女性(5人目の被害者)がいたりと違和感もある作品ですが、
そういった欠点を補って余りあるほど、最後に悪党どもをギャフンと言わせた後、
雪平が並木道で「○○、馬鹿かお前は…」と吐き捨て→夫婦の絆を見せ→
アンフェアメインテーマ曲→本作タイトル「アンフェア the answer」→
怒涛の伏線回収しまくり映像群→中島美嘉「Love is Ecstasy」で決めるという
素晴らしい演出の数々が最高に格好良く、有終の美を飾っていると思います。
映画「シックスセンス」のように、1回目より2回目の方が楽しめる映画であり、
実際の国家機密が入ったUSBメモリーの行方を考えるだけで面白い傑作邦画です。
私は劇場公開中に3回も観ましたが、それだけリピートする価値のある作品です。
アンフェア the answer DVDスタンダード・エディション
監督が女性だからかもしれないが、
主演の篠原涼子が年をとってきて、程好く
肩の力の抜けたリアルな女性像が良い。
伏線も丁寧に張られていて
最後まで心地よい緊張で引っ張られる。
シリーズとしては無理な設定とかご都合主義とか
いろいろ突っ込みどころは満載だが
現代でハードボイルドやるには、
断然男よりも女の方が似合っている、
ということが実感できる。
ドラマの邪魔しないBGMもまた良し。