青い壺 (文春文庫)
まず作者有吉佐和子が楽しんで書いているのが伝わってきます。再出版されるのもうなづける傑作です。連作短編の赴きもあるので、忙しくて時間がない人でも読みやすくなっています。作者の手から離れ「青い壷」は色々な人の手に渡っていきます。そして、最期は、有吉佐和子のクスクスとした笑い声が聞こえてくるようです(登場人物には悪いけれど)。
紀ノ川 [DVD]
司葉子の代表作であり、たぶんもっとも美しい頃に撮られた映画。女の一生ものというと、少し安っぽい感じになるけれど、時代背景も含めて、和歌山の旧家に川を船でゆられて嫁いでいく司葉子の、美しさ。
明治期の和歌山の旧家の暮らしや、文化に触れられ、日本の古き良き時代が郷愁を誘う。
女のお守りである「乳形」をこしらえて、神社に奉納する風習のシーンも忘れられない。
また、美しい兄嫁に思慕の想いをよせる若き丹波哲郎も必見。
ヒロインの娘役は、若かりし頃の岩下志麻。母親とは全く違い、行動的で革新的な娘を演じた。
この作品と、「華岡青洲の妻」もおすすめ。
一の糸 (新潮文庫)
清太郎(後の徳兵衛)の「芸」に魅せられて、
一生その愛に生きた茜。三味線の芸一筋に生きた
徳兵衛も、戦争や文楽の動乱・波乱を乗り越え、
愛という「信念」を貫き通した茜も、それぞれに
幸せな一生を過ごせただろうなと思う。
頑固なまでに徹底した信念を「一の糸」にたとえ
物語ってゆく、有吉さんの文章は、文楽を知らない
わたしでも、十分に理解出来ました。
揺らぐことないまっすぐな愛
守り抜く尊さ。
迷いを感じる人に特にお勧めしたい1冊です。
悪女について (新潮文庫 (あ-5-19))
有吉作品の中で「非色」に続く快進作!とにかく見せ場が多い。展開も素晴らしく、キャラクター一人一人、妙にリアリティがあり、これも有吉佐和子自身調査魔という所から来ているからか?とにかく大長編にもかかわらず一気に読めた最近の日本の文壇ではトント見かけなくなった秀作。映画化を熱望。