地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
1969年制作 イタリア=スイス 157分
一言でいいますと、ナチス台頭時代のドイツの貴族の一家の大河ドラマ
歴史的背景から言いますと、1933年ヒットラーがSS(親衛隊)によってSA(突撃隊)を粛正させた事件の映画化だから、シュマイザーMP40が登場するのは考証にあわない。ってこな事はどうでも良いのですが、主人公はフリードリッヒ(ダーク・ボガード)ではなく、どう考えてもマーティン(ヘルムート・バーガー)でしょう。
変態鬼畜野郎たちの晩餐会と言った感じで「羊たちの沈黙」や「ハンニバル」なんて片手でぶち抜く凄さ人間の業の深さを描いています。
まさに邦題の「地獄に堕ちた勇者ども」ぴったりですね。
1969年当時の古さを全く感じさせない映画ですね。
心臓の弱い人や、人並みの道徳心がある方にはお勧めできません。
地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
今、こんなにこの名作が安価に手に入るのかとしみじみ。
内容は文句ありません。
貴族で大財閥のエッセンベック家が内紛を利用されてナチに乗っ取られるという話ですが
内容は毒満載で優美ですらあります。
特に財閥を冷徹に見据え乗っ取りを企てる親衛隊長アッシェンバッハ(ヘルムート・グリーム)。
映画を結構見てきた自分ですがここまで美しくも恐い親衛隊の将校を見たことがありません。
風光明媚な湖畔でドンチャン騒ぎのパーティの後親衛隊に殺される突撃隊。
主人公の財閥御曹司で生きる目的のない爪弾き者のマルティンが
アッシェンバッハにそそのかされ母親と愛人を陥れて財閥の乗っ取りを図る事。
この全ての後ろに彼の姿があります。
貴族の家名の影で薄汚いことばかりをしている親族を見続けたマルティンにとって
ビシっと制服に身を包み落ち着き払っているアッシェンバッハは
頼もしい父代わりに見えたのかもしれません。
そしてマルティンもあのナチの制服を着ることになるのです。
母に強いられた女装に別れを告げて・・・。
さていつもは冷徹に静かなアッシェンバッハが唯一狼狽したシーン。
その時に表れた登場人物の言葉が歴史と時代の流れの中で何が大切なのかを教えてくれます。
珍しくナチスが上り坂の時代を題材にした映画。
デカダンに満ちあふれた長編です。
興味をもたれた方は是非観てください。
ちなみに何故か音声は英語です(笑)。
地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
性的倒錯、耽美、頽廃、官能美、倦怠、俗悪、そして滅びのロマンティシズム、、、これらは、この映画を評する際、必ず謳われるキー・ワードの数々であるが、イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティが、ブルジョア階層の没落、ファシズムの台頭、ヒトラーの第三帝国の隆盛と不吉な予兆、という3つのコンセプトを題材に描けば、必然的にそうなるであろうと実感出来る傑作だ。他のヴィスコンティ作品同様、重厚でデカダンス溢れるオペラの如き濃厚なドラマが、2時間30分、じっくりと展開する。当時20歳だったシャーロット・ランプリング(!)を子持ちのエリザーべトに抜擢したヴィスコンティの慧眼ぶりもさすがだが、物語の核となる母子を演じたイングリット・チューインとヘルムート・バーカーが白眉の素晴らしさだ。ベルイマン映画とは全く違う顔を見せるチューインの狂気じみた演技、そして、晩年のヴィスコンティに文字通り寵愛されたバーカーの、幼女姦通、女装、男色、母子相姦と、グロテスクながらも、他の俳優たちを駆逐する強靭的な存在感が凄い。
地獄に堕ちた勇者ども [DVD]
相続をめぐる家長的室内ドラマを背景に、ドイツ鋼業界は本音を言えばナチスとの軍産複合体制の夜明けを待望している。
一方、財界やプロイセン伝統のドイツ国防軍にとってヒトラー子飼いの私兵「突撃隊」は目ざわりである。
新生ドイツのために培ってきた協力関係も、ヒトラー政権が近づくほど煙たくなって罅割れが生じ、ついには粛清に至る。
こうした政治的妥協を巧みに用いたヒトラーの偽装的な中道路線の空恐ろしさを見事に描写した作品である。
この物語の底流には Ha'liebe すなわち憎悪愛がそこかしこに散りばめられていて、登場人物各々が未だ得たいの知れな
いナチスの魅力に撮り憑かれながら、性格的弱点にカンフル注射を打たれ権力に迎合していく小市民の傲岸さをヴィスコン
ティは喝破している。