眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
プリオンが催すBSEやそれにまつわる脳の病気を描いた作品。
世界各地のそれぞれの地域で発生した脳の病気の事例を紹介し、それについて専門家や学者が分析している。
作品自体の焦点のあて方は悪くはなく、現代でも確固たる治療法が確立されておらず、不治の病として難病に指定されているこれらの病気にスポットを当てて描いたことは興味深い。
私はこれらの病の専門家でもなければ、医療の知識の断片すら持ち合わせていないが、事例を中心に描かれているので知識がなくても読み進めていくことができた。
ただ、訳者はスキルの高い翻訳者であろうが、読んでいて訳本特融の機械的な感じは拝めず、読んでいて苦しいと思う事があった。
その点で★3つとした。
決定版 太平洋戦争5消耗戦~ソロモン・東部ニューギニアの戦い (歴史群像シリーズ)
このシリーズには、毎号『写真週報』の復刻版がついている。
当時刊行されていた、政府による広報誌である。
そのなかにマレーやフィリピンで現地住民に技術指導をする日本人の記事がある。
怠け者だったマレー人もフィリピン人も日本の兵隊のおかげで、
働くよろこびがわかってきたと、解説がついている。
似たような記事は、いまの新聞にも散見されるのではないだろうか。
外国人労働者受け入れが言われているが、日本の都合で外国人をつれてきて、
日本人の都合のいいように働かせようという発想は、戦時中とすこしも変わっていない。
本誌の記事もさることながら、この付録だけでも価値があるシリーズである。
地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相 (新潮新書)
あらすじは他のレビューの方にお任せして私は読んでいて一番辛かったことを書きます。戦後生まれの私は、無事に帰還した方々がなぜすぐにでも戦死した仲間の遺族のもとに行って彼らのことを語らなかったのか・・・不思議に思っていました。自分だけがのうのうと帰還してしまったことで戦友の遺族の家にはとても心情的に行けないというのもあったでしょうが、それ以上に、真実(この本に書かれてあるような)を知る帰還者は、「いったい何と遺族に伝えたらいいものか・・・。」で苦悶していたのだと思います。遺族が納得できるような戦死は殆ど無いのですから。また彼らの死亡原因を伝えるにはそれなら自分がどうして帰還できたかその真実さえも話さなければなりません。狂気の現実の中で何ヶ月も何年も過ごしているのです。息のある友を見捨て、自分が生きるために友の死を喜び、死体から全てを奪い取って進軍し・・そんなことを話せるわけがありません。五木寛之さんの「引き揚げてきた人は必ず良心に背くことをしています」ということばが胸に迫ります。そんな地獄絵図の状況でおきたことに帰還者は一生苦しむのです。著者のようにかなりの年齢になってからもうなされるほどだと思います。NHKのTVで帰還者のことばを聞きました。彼らは今でも「証言したことがよかったかどうか・・わからない・・」と自らの罪の意識にさいなまれているのです。戦争という真実の重みにつぶされそうになりました。
私は魔境に生きた―終戦も知らずニューギニアの山奥で原始生活十年 (光人社NF文庫)
これはすごい本だ。ニューギニアの奥地で十年近く原始生活を送った元日本兵の手記である。
当然その生活の様は壮絶であり、同僚の死など悲惨な出来事もあるが、そこはかとない洒落気も感じられ、読後感はすこぶる良い。
特に現地人との交流が始まってからは、ほのぼのとした感すらあり、読んでいて思わず頬が緩んでしまう。
この本は文化人類学的価値もあると思うので、是非英訳して世界で出版して欲しいくらいである。
サバイバルや冒険に興味がありながら未読の人には是非読んで欲しい。
刻に抗いし者〈4〉―ADVANCE OF Z (DENGEKI HOBBY BOOKS)
Zでは省かれたアムロ参戦のニューギニア基地攻防戦の詳細が迫力ある戦闘シーンの連続で描かれます。その間に挟まれる登場人物の背景描写がまたすばらしい。今まで注目されていなかった脇役キャラにもスポットが当てられていて、死にゆく者も生きゆく者もそれぞれの生き様が描かれます。私としてはお気に入りの2人のキャラが戦死してしまったことが残念。この展開からバーダー少佐いい死に方しないだろうなあ(^_^;)。今回で地上編完結。次回から宇宙編へ突入、寂しいですが主人公機ワグデイルとはこれでお別れです。次刊からガンダムケストレルが本格的に登場。本当はこのまま主人公機はGM系列で行って欲しかったんですが、さすがに敵キャラが強くなっていくので仕方ないことか。Z本編や「ティターンズの旗のもとに」にもクロスオーバーしそうな展開なので楽しみです。今後、正史に組み込まれていくであろう本当に良質なガンダム公式外伝です