氷菓 (角川文庫)
私が高校の頃、新校舎の横にはまだ旧校舎の一部が残されていて、そこは
文科系の部の部室として使われていた。当時のそんな様子を思い出しながら、
ちょっぴり懐かしい気持ちで読んだ。
学校生活や部活動の中で起こるちょっとしたミステリアスなできごと。奉太郎は
次々とその謎を解いていく。そしてそのことは、同じ部の千反田の叔父が絡む
33年前に起こったあるできごとの真実を掘り起こすことになる。一人の人間の
運命を狂わせたできごとは、高校時代に似たような経験をした私にとっては胸の
痛くなるような話だった。ラストで明かされる「氷菓」という名前に込められた
思いも、切ない。青春とミステリーが組み合わされた「古典部シリーズ」を、
これからも楽しんで読んでいきたい。
ふたりの距離の概算 (角川文庫)
古典部の四人が二年に進級し、新入生勧誘週間での出会いを
きっかけに一年生の大日向友子が仮入部し、
すぐに四人と打ち解けただけではなく、奉太郎の誕生日会、
オープン前の従兄の喫茶店でのモニターと、
彼女主導のイベントまで行なうような仲になったにもかかわらず、
本入部締切直前になって入部しないことを宣言した理由を探るべく、
奉太郎が学校行事である20kmマラソンで走りながら回想し、
答えを導き出そうとするのが今回のおはなし。
どこを切り取ってもネタバレになってしまいそうなので、
詳しく言及するのは避けますが、人と人とのリレーションシップって、
一体何なのだろうと考えさせられるいう、小学校の頃の道徳の教科書の
物語の読後感に似た感覚に陥りました。
また、第一作『氷菓』の頃は本当の意味で朴念仁だった奉太郎が、
今度は(多くの人が誤解しているであろう)違う意味で朴念仁に
なっているところも気になります。
邦題『ふたりの距離の概算』には様々な意味が含まれ、
英題『It walks by past』も、ストーリーの進め方を的確に表した、
良いタイトルかと。
是非、この話もいつの日か京都アニメーション制作で観てみたいものです。
氷菓 限定版 第1巻 [Blu-ray]
アニメは全部見ました。序盤から中盤の話もよかったですが、終盤の短編の連打にやられた感じです。
最終回を見て買うことにしました。
作品の良さに関してですが、アニメは丁寧ですね。作画云々は言うに及ばず全体を考えて最初からキャラが配置されていて好感が持てます。
話ももちろん楽しめました。確かにミステリーとして見るとその謎・解決方法なんか微妙なんじゃないかと言うのは確かにあるが、それは見方のずれかなとも思いました。
かく言う自分も氷菓のとどめのネタにえええと突っ込みを入れそうになった口だったりね。途中の話のネタなんかのほうが、へーって思うことも多く、むしろ最初の氷菓のネタそのものが突っ込まれやすいのが欠点かもしれませんね。
しかし、情報を部分部分を集めてその場その場での最善手、最善の考え的を明示されるようなミステリーの作品にあまり触れてなかったせいもあるかもしれませんが、その推理の過程は凄く楽しめました。
あと、千反田さんと里志くんという2人の比較対象が難しいある意味濃いキャラ達をどう思うかで氷菓が結構変わるような気がします。
BDを手に入れてですが他と仕様が違うなと思ったのは(うちの再生機のせいかもしれませんが)、本編以外のスペシャル特典が本編に続いて連続で再生される点。
ロケだの録音風景だのですが、録音風景なんかは特に音楽家すげーと思わずにはいられなかった等の感想もありますが、わざわざ操作しなくていいのは正直うれしかったです。まあこれは、作品によるかもしれませんが、穏やかな流れに比較的静かなロケ風景などの接続はありだと思いました。
付属CDもまあ楽しめますが、異世界のアナザーシナリオ展開や中の人のラジオなどは好みが分かれるのでしょう。女郎蜘蛛の後話は笑いました。音楽は短いですがよいです。
あと1巻には3巻まで入るBOX付き、もちろん4巻には6巻まで入るBOXが付いてきました。7巻には何巻まで入る箱なんでしょう、私気になり(ry
11巻までマラソンか〜、値段に関してはどうしても頭痛いですね。
ついでに愚者やクドの長編を2話ずつ収録一カ月待ちは半端なく待ち遠しいっす。
さよなら妖精 (創元推理文庫)
作者の出世作、というだけあって、優れた短編のようなスッキリした後味を残す佳作。父の仕事の関係で、短期に日本に滞在することになったという、ユーゴスラビアから来た少女、マーヤ。彼女と主人公達の触れ合いを描くのが本作だが、それは回想として語られるのであって、現在はマーヤは帰国し、そしてユーゴスラビアは内紛状態にある。彼女を心配した主人公達は、幾つかの共和国として成り立つユーゴスラビアの、どの国に彼女がいるのかを突き止めるために、彼女の過去の言動を日記から拾い出して推理しようという、表面的にはそういう進行となっている。この物語構造だけでも充分に斬新であり、同時に、消息を心配する友人として、たったそれだけのことしかできないもどかしさ、すなわち、マーヤがどの国に帰ったのかを突き止めると言っても、それがわかったからどうだというのか? それでも何かせずにはいられない、というメンタリティが作者独特の雰囲気を生み出しているといえる。要するに、青臭いのだ。物語の結末として、彼女は危険を承知の上で帰国したのであり、彼女の覚悟に対して主人公達は、あまりに子供であったことを突きつけられるしかないのである。これはそんな、細かい日常の謎に触れるミステリでありながらも、遠い国の少女を想う、青春小説である。