ザ・キンクス・コーラル・コレクション
あのレイ・デイヴィスがクラシックの名門デッカから出したアルバム。とはいえ、全てレイ自身の作品で固められ、彼自身がリード・ヴォーカルをとり、エレクトリック・ギターやベースなども加わっているし、楽器が加わらない5曲目も良く、ただのイージー・リスニング風アルバムには堕していない。それどころか、レイとクラウチ・エンド・フェスティヴァル・コーラスのコラボレイションは、ここに収められた曲の数々にオリジナル版とはまた違う魅力を加えている。
9−14曲目がヴィレッジ・グリーン・メドレーとなっているが、このアルバム全体があまり切れ目もなく演奏され一つの雰囲気を作り上げてもいる。一癖も二癖もあるレイおよびキンクスの曲で固めているのに正統派のクリスマス・アルバムのように聴こえるのも面白い。「ウォータールー・サンセット」、「セルロイド・ヒーローズ」、「ワーキングマンズ・カフェ」、「ヴィレッジ・グリーン」など、もともとノスタルジックな美しさを持つ曲はもちろん、その他の曲もよい。「ヴィクトリア」や「シャングリ・ラ」も感動的だ。「ユー・リアリー・ガット・ミー」は、合唱から始まるのがユニークなものの少々寂しくもありパワー不足な感もあるが、最後の「オール・オヴ・ザ・ナイト」では印象的なギターのフレーズが登場すると合唱団まで大いにのって歌ってアルバムを締めくくる。
残念なのは、噂になっていたキンクス再結成がならず、ここにもデイヴが参加していないことだ。「キンクス」の名を使ったアルバムを作ったことがレイの再結成の気持ちが高まってきたことの表れなのか、それともそこにソロ作も入れたことが「自分こそがキンクスだ」もしくは「自分ひとりでもキンクスの音楽をやっていける」という気持ちの表れなのか、いろいろと憶測してしまう。次の作品が気になるアルバムでもある。
全体としては星4.5くらいだが、SHM盤ということで星5つ。
ザ・フライ [Blu-ray]
20年以上昔の作品だが画質は良好。
FOXの昔の映画のBDらしくフィルムライクな映像だが、
バラツキなどは無いので特に違和感が無い。
あと初期DVD版には日本語吹き替え音声が無かったが
これには津嘉山正種氏と高島雅羅さんのコンビで収録。
監督のコメンタリーももちろん収録。
今見ても色褪せない名作ホラーを是非。
ビート・ストリート [DVD]
ほんの小さな片田舎で、HIPHOPへの憧れを表現する術を持っていなかったあの頃。この映画にはファッション、音楽、ブレイクダンス、あの時代にカッコいいと思っていた全てが詰まっている。あらゆる文化が洗練された21世紀の今でも、色褪せることなくストレートにカッコいい映画。
シー・マイ・フレンズ
THE KINKSそのものと言っても過言ではないレイ・デイヴィスによるセルフカヴァーアルバム。
各曲に有名ミュージシャンが参加し、それぞれレイと協演していることから、見方を変えれば
THE KINKSのトリビュートアルバムにレイが参加したと捉えることも出来る。
が、内容の方はと言うと、そんな鶏が先か卵が先かといった論議など無意味に思えてくるような
素晴らしい作品に仕上がっている。(アダルトなロックアルバムと呼んでしまいたい)
本国、もしくは海外と日本では比べ物にならないくらい人気に温度差があるバンドというのは
数多くあったりするのだが、実はTHE KINKSもこれに当てはまっているバンドであり、VAN HALEN
が大ヒットさせた「You Really Got Me」なんて当初はバンドのオリジナルだと思っていたファン
も多かったと言うし、有名バンドがカヴァーした曲から原曲に辿り着くというアーティストの上位
に入るんじゃないか?と思ってしまいそうになるのもTHE KINKSというバンドではなかろうか。
そんな事情もあるTHE KINKSというバンドが、このレイと有名ミュージシャンらによる素晴らしい
コラボの数々により、少しでも再評価されることを願いたい。
本作品の音質を体験したあとに、彼らTHE KINKSのオリジナルアルバムやベストを聴いたら、あまり
の音質の違い(時代が時代でしたから。それにいまだ日本ではリマスターとか出ていない気がするし)
に愕然とするかもしれないが、曲は本当に良いものが多いですから。
原曲を辿るというのもこれまた良いものですよ。
絵でわかるマイルス・デイヴィスの生涯―マイルスの音はアートだった… (Scene of Jazz 1)
ジャズ本の中では異色。雰囲気のあるイラストと簡潔な文章で、特に音楽を聴きながら読むと最高! 文章が沢山書いてあるジャズ本は、音楽より文章を見てしまうから、なるほどこれはマイルスを聞きながら読み流せば、ジャズの楽しみをいっそう広げてくれます。
このシリーズの続編を期待します。