努力の証―第八代国連事務総長 潘基文物語
連事務総長にまで上りつめた「アジアの星」である、潘基文(バン・ギムン)の伝記。著者は韓国のYTNというテレビ局の記者で、韓国で大ベストセラーとなった本。
潘基文のまっすぐな生き方に、読んでいて自分の襟を正される思いがした。特に以下の3点。
1)「敵を作らない」という「和」を尊ぶ手法が、外国人相手にも可能だという事。よく日本人の「和」を尊ぶ「対決しようとしない」姿勢は、ともすれば「白黒」つけて勝負に走りがちな外資系では批判の対象となるが、それは間違いで、内容・能力が伴えば「和」は世界に通用するやり方であることを、潘基文が自らのやり方で証明してみせた。
2)どんな時も向上心を忘れてはならず、努力すれば大抵のものは手に入るという事。潘基文が何十年前の韓国で独学で英語を身につけたこともそうだし、外交官になってから多忙の合間を縫ってフランス語や(苦手な)社交ダンスを身につけたのを見ると、自分自身がいかに怠慢か、情けなくなる。何かできない障害は外部にあるのではなく、自分自身の怠惰な心であることを、嫌という程突きつけられた。
3)リーダーに倫理観が不可欠だという事。潘基文が自分の子供の結婚を、お祝いの金品をもらわないために隠し通したと言う逸話や、誰の派閥にもならず仕事(国家)に忠実だったことは、誰に対しても分け隔てなく感謝の心を忘れない姿勢は、特に(私腹を肥やそうとする人も多い)彼の地位を考えると、賞賛に値する。その高い倫理感による「無私」の姿勢のおかげで、彼は誰に「刺される」事も無く、全く違う政府・大統領の下でも継続して重用され続けた。
等々、元は中学生や高校生向けに書かれた本だが、大人が読んでも十分に考えさせられ、自分の生き方を振り返る助けとなる、人生の指針としても、リーダー論としても読める、良書。この偉大な潘基文について書かれた本が他に少ないこともあり、全ての方にお勧め。